1. 建設業の現場作業は、紹介も派遣も法律で使えない
「職人が足りないから人材紹介を使おう」と考えて断られた、あるいは「建設業は扱えません」と言われた——そういう経験をした方は多いと思う。理由は紹介会社の方針ではなく、法律だ。
建設工事の現場で直接作業する職業については、有料の職業紹介も、労働者派遣も、どちらも法律で禁止されている。根拠になる条文は次の2つだ。
有料職業紹介事業者は、港湾運送業務(略)に就く職業、建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)に就く職業(略)を求職者に紹介してはならない。
何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。
二 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
出典:e-Gov法令検索(職業安定法/労働者派遣法)。2026年8月時点の条文。
2つの法律が、まったく同じ「建設業務」という言葉で、人を集める入口を両方とも塞いでいる。製造業も小売業も飲食業も、紹介と派遣は使える。現場で作業する職種についてどちらも使えないのは、建設業と港湾運送業だけだ。
この前提を知らないまま「うちは採用が下手だから人が集まらない」と考えている会社は少なくない。実際には、他業界が当たり前に使っている手段が、法律の側で最初から外されている。
2. どこまでが「建設業務」なのか|線引きを条文と要領で確かめる
条文の定義だけでは、自社のどの職種が該当するのか判断しづらい。ここは厚生労働省が出している業務運営の要領がはっきり示している。
この業務は建設工事の現場において、直接にこれらの作業に従事するものに限られる。したがって、例えば、建設現場の事務職員が行う業務に就く職業や機械等(半導体製造装置やエレベーター)の製品の日常的な保守、点検を行う業務に就く職業は、上記建設業務に従事するものに該当せず、取扱職業の範囲から除外されるものではないので留意すること。
つまり、建設会社に勤めていても、現場で直接その作業をしていないなら建設業務ではない、という線の引き方をしている。
厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第2、および「労働者派遣事業関係業務取扱要領」第2(いずれも令和8年7月31日から適用される版)
整理すると、次のようになる。
| 職種・業務 | 有料の人材紹介 | 労働者派遣 |
|---|---|---|
| とび・鉄筋工・型枠大工・左官・塗装・内装・配管・解体 | 使えない | 使えない |
| 土木作業員・重機オペレーター・足場の組立 | 使えない | 使えない |
| 資材の運搬・現場での組立てなど、作業の準備 | 使えない | 使えない |
| 施工管理・現場監督 | 使える | 使える 専任の主任技術者・監理技術者を除く |
| 設計・CADオペレーター・積算 | 使える | 使える |
| 営業・経理・総務・現場事務 | 使える | 使える |
建設業務に当たるかどうかは、肩書ではなく実際に行う業務で判断される。同じ「現場監督」でも、自ら作業に入るなら建設業務に該当し得る。
そしてもうひとつ、見落とされやすい注意点がある。
要領は、派遣労働者が従事する業務の一部に建設業務に該当する業務が含まれている場合も違法な労働者派遣になるとしている。職業紹介についても同じ考え方で、求人に取扱職業以外の職業が一部含まれているときは、全体として違法な職業紹介になるとされている。
「施工管理として受け入れたが、人手が足りない日は現場に入ってもらっている」という運用は、この一文に触れる。
3. 施工管理・設計・事務は使える|ただし置けない技術者がいる
要領は、施工管理について明確に書いている。
職業紹介の要領
土木建設等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず、有料職業紹介事業を行うことができるものであるので留意すること。
労働者派遣の要領
土木建築等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となるものであるので留意すること。
施工管理に強い人材紹介会社や派遣会社が多いのは、この線引きがあるからだ。裏を返すと、紹介会社が「建設業に対応しています」と言うとき、その中身は施工管理や設計であることが多い。職人の採用に困っている会社が問い合わせても話が噛み合わないのは、これが理由だ。
派遣で置けない技術者がいる
ただし施工管理でも、派遣にはひとつ制限がある。
工事現場ごとに置かなければならない専任の主任技術者・監理技術者については、建設業法の趣旨に鑑み、適切な資格・技術力等を有する者——工事現場に常駐して専らその職務に従事する者で、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものに限る——を配置することとされている。そのため労働者派遣の対象にはならない。
出典:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」第2(令和8年7月31日から適用される版)
つまり「監理技術者が足りないから派遣で埋める」はできない。この職位は自社で雇うしかない。
4. なぜ建設業だけ禁止されているのか
この問いに答えている記事は多いが、読むときに注意がいる。法律の条文には、建設業務を禁止する理由そのものが書かれていないからだ。
職業安定法32条の11第1項は、港湾運送業務と建設業務を名指しで挙げたうえで、「その他有料の職業紹介事業においてその職業のあつせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるものとして厚生労働省令で定める職業」と続けている。労働者の保護という考え方は示されているが、建設業務がなぜその類型に入るのかまでは書かれていない。
国の説明として確認できるのは、次の位置づけだ。
厚生労働省は、建設業務について職業安定法により有料の職業紹介事業の実施が禁止されているとしたうえで、「建設労働者の雇用の安定等を図る観点から」、建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、建設事業主団体が厚生労働大臣の許可を受けた場合には建設業務有料職業紹介事業を実施できる、と説明している。
同法第1条も、建設業務に必要な労働力の確保に資するとともに建設労働者の雇用の安定を図ることを目的に掲げている。
出典:厚生労働省「建設業務有料職業紹介事業について」/建設労働者の雇用の改善等に関する法律 第1条(e-Gov法令検索)
一方で、解説記事でよく見かける「重層下請構造で責任の所在が曖昧になるから」「現場ごとに人が動き雇用が不安定になりやすいから」「安全管理の責任を明確にするため」といった説明は、条文にそう書かれているわけではない。趣旨としては近いが、条文の文言と、後から付けられた説明は分けて理解しておいたほうがいい。相手に説明するときに間違えずに済む。
実務として押さえるべきことは1つだ。理由がどうであれ、建設業では人を「連れてきてもらう」形が使えない。だから採用の設計そのものが、他業界とは別物になる。
5. 例外の2制度|許可を持つ団体は全国で3つ
まったく例外がないわけではない。建設労働者の雇用の改善等に関する法律が、事業主団体を通じた2つの仕組みを用意している。
建設業務有料職業紹介事業
実施計画の認定を受けた事業主団体が、厚生労働大臣の許可を受けて行う職業紹介だ。許可を受けた団体には、職業安定法32条の11第1項が適用されない。
- あっせんできるのは期間の定めのない労働契約に限られる
- 求人者はその団体の構成事業主、求職者は構成事業主(一人親方)や構成事業主に常時雇用されている者
- 求職者から手数料を徴収してはならない(原則)
令和8年7月1日現在、厚生労働省が公表している許可団体は次の3つである。
- 一般財団法人みやぎ建設総合センター
- 一般社団法人沖縄県建設業協会
- 一般社団法人全国建設人材協会
出典:厚生労働省「建設業務有料職業紹介事業について」
建設業務労働者就業機会確保事業
もう一つは、団体の構成事業主どうしで人を融通し合う仕組みだ。自社が常時雇用している労働者を、雇用関係を維持したまま、他の構成事業主の指揮命令のもとで一時的に働かせることができる。許可を受けた場合、労働者派遣法4条1項2号が適用されない。
- 対象になるのは常時雇用の労働者のみ。有期雇用や日雇いは対象外
- 社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(労災保険・雇用保険)の適用労働者であること
- 送り出す側に財産的な基準がある(基準資産額1,000万円×事業所数、事業資金として現金・預金800万円×事業所数 など)
出典:厚生労働省「建設業務労働者就業機会確保事業について」/建設労働者の雇用の改善等に関する法律 第15条・第18条・第31条(e-Gov法令検索)
どちらの制度も、団体の側が実施計画の認定を受け、さらに許可を取っていることが前提になる。事業主団体の要件も、構成員が30以上で、その8割以上が建設業許可を受けた建設業を主たる事業とする事業主であることなどが定められている。
つまりこの2制度は、「今週人が足りないから使う」という性質のものではない。自社が所属している団体が認定と許可を持っているかどうかで、使えるかどうかが決まる。心当たりがなければ、まず所属団体に確認するところからになる。
6. 違反するとどうなるか|紹介した側・受け入れた側
罰則は条文に定められている。
| 行為 | 違反する条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 建設業務について有料の職業紹介を行った | 職業安定法 32条の11 第1項 | 1年以下の拘禁刑 または100万円以下の罰金 (同法64条4号) |
| 建設業務について労働者派遣事業を行った | 労働者派遣法 4条1項 | 1年以下の拘禁刑 または100万円以下の罰金 (同法59条1号) |
出典:e-Gov法令検索。いずれも2026年8月時点の条文。
受け入れた会社はどうなるのか
ここは紹介と派遣で扱いが違う。正確に押さえておきたい。
- 派遣:労働者派遣法4条3項が「労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その指揮命令の下に当該労働者派遣に係る派遣労働者を第一項各号のいずれかに該当する業務に従事させてはならない」と定めている。受け入れる側にも条文上の禁止がかかる。
- 職業紹介:職業安定法32条の11第1項が名宛人にしているのは有料職業紹介事業者で、この規定の違反について求人した会社を罰する条文は置かれていない。
ただし、求人する側がまったく無関係というわけではない。求人の出し方そのものには別の罰則がある。虚偽の条件を提示してハローワークや職業紹介事業者に求人を申し込んだ場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金と定められている(職業安定法65条10号)。
派遣を受け入れた側には、罰則ではなく行政上の措置が用意されている。
厚生労働大臣は、4条3項に違反している受け入れ側に対して是正のために必要な措置を勧告することができ、勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(労働者派遣法49条の2)。
さらに、その派遣就業を継続させることが著しく不適当と認めるときは、派遣元に対して労働者派遣の停止を命ずることもできる(同法49条2項)。
建設会社にとっては、罰金より社名の公表のほうが実際には重い。元請や発注者の目に触れるからだ。
そして、罰則や勧告の有無だけで判断するのも危うい。違法な紹介で入った人は、雇用の入口からして不安定な状態にある。現場で事故が起きたとき、元請から体制を問われたときに、説明がつかない。
「建設業でも紹介できます」と言われたときは、次の2つを確認しておくと間違いが減る。
- その職種は施工管理・設計・事務など、建設業務に当たらないものか
- その団体は、建設業務有料職業紹介事業の許可を受けているか
7. 応援や外注なら大丈夫なのか|請負と偽装請負の境目
ここまで読んで、こう思った方がいるはずだ。「うちは紹介も派遣も使っていない。足りないときは協力会社に応援を頼むし、一人親方に外注している。それなら関係ないだろう」と。
結論から言うと、請負(外注)そのものは職業紹介でも労働者派遣でもないので、ここまでの規制の対象ではない。ただし、形式が請負でも実態が派遣だと判断されれば、建設業務の労働者派遣として違法になる。
その判断基準は、国が告示で示している。
請負の形式による契約で自分の雇う労働者を働かせていても、次の両方に当てはまらない限り、労働者派遣事業を行う事業主とされる。
①自分が雇う労働者の労働力を、自ら直接利用していること
・業務の遂行方法の指示や、仕事ぶりの評価を自分で行っている
・始業終業の時刻、休憩、休日、残業の指示や管理を自分で行っている(単に把握しているだけでは足りない)
・服務規律に関する指示と、配置の決定・変更を自分で行っている
②請け負った業務を、自己の業務として相手方から独立して処理していること
・業務の処理に必要な資金を、すべて自らの責任で調達し支払っている
・民法・商法その他の法律で定められた事業主としての責任をすべて負っている
・単なる肉体的な労働力の提供ではないこと(自分の責任と負担で用意した機械・設備・器材・材料で処理しているか、自ら行う企画または自分の専門的な技術・経験に基づいて処理していること。業務上必要な簡易な工具は除く)
出典:労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号・最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)第2条
同じ告示の第3条は、この2つを形式的に満たしていても、法の規定に違反することを免れるために故意に偽装したもので、その事業の本当の目的が労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れられないとしている。契約書の書き方で決まる話ではない、ということだ。
建設現場で危ないのはどこか
実務に引き寄せると、危ないのは次のような形だ。
- 応援に来た人に、こちらの職長が直接その日の作業内容を指示している
- その人の始業・終業や残業を、こちらが決めている
- その人をこちらの都合で別の現場に配置換えしている
- 道具も材料もこちらが用意し、来ているのは人だけ
これらが重なるほど、契約書が「請負」でも実態は労働者派遣に近づく。そして建設業務の派遣は禁止されているので、そのまま違法な労働者派遣ということになる。
一人親方への外注も考え方は同じだ。指揮命令をして働かせているなら、契約の形にかかわらず実態で判断される。国土交通省が問題にしている「偽装一人親方」も、この延長線上にある。
もちろん、建設業では元請と下請が同じ現場で働くこと自体が当たり前で、施工体制のなかで一定の調整が行われるのは当然だ。どこからが指揮命令に当たるのかは実態に即して判断されるので、線を引きにくい場面では所轄の都道府県労働局に確認するのが確実だ。
ここで押さえておきたいのは1点だけ。「紹介も派遣も使えないから、応援と外注で回す」という発想は、回し方を間違えると別の違法にぶつかる。だからこそ、自社で雇う人を増やす方向に手をかける意味がある。
8. では、どうやって人を集めるのか
ここからが本題だ。紹介も派遣も使えないなら、残る道は決まっている。
無料の職業紹介は禁止されていない
まず押さえておきたいのは、禁止されているのが有料の職業紹介だという点だ。厚生労働省の要領は、許可または届出をした無料職業紹介事業者について「原則として全ての職業について無料職業紹介事業を行うことができる」としている。
ハローワークが建設の求人を扱えるのはこのためだ。また建設分野の特定技能外国人については、国土交通省が令和2年8月の報道発表で、建設業では職業安定法により有料職業紹介が禁止されているため、関係業界団体が設立したJAC(一般社団法人建設技能人材機構)が無料職業紹介事業を行う、と説明している。
出典:厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第2/国土交通省 報道発表(令和2年8月20日)
結局は、自社の求人をどれだけ整えられるか
現場の職人を採るなら、打ち手は次の3つに集約される。
- どこに出すか:無料で出せる媒体から試し、反応を見て有料に広げる。媒体ごとの違いは建設業の求人媒体一覧と選び方にまとめた。
- 何を書くか:給与の幅、仕事の具体、休日の実態。ここが曖昧なまま媒体だけ変えても結果は動かない。書き方は求人が来ない原因と対策で整理している。
- 応募後にどれだけ速く動くか:応募から連絡までの時間が長いほど、他社に流れる。母集団を増やす前に、取りこぼしを止めるほうが早い。
採用や育成にかかった費用は、建設業向けの助成金で一部を戻せる場合がある。金額と要件は建設業の採用に使える助成金・補助金一覧に整理した。
職種ごとの事情はとび・鉄筋工・塗装工など現場技能工の採用、土木に絞った話は土木の求人に応募が来ないで扱っている。
9. ゴリラ採用の考え方
ゴリラ採用は、建設業に完全特化した採用代行(RPO)だ。現場の作業職は有料の人材紹介が使えない——この制約を前提に置いたうえで、求人原稿づくりから媒体の運用、応募が来たあとの対応までをまるごと代行する。
人材紹介と採用代行は、ここが根本的に違う。人材紹介は「人を連れてきて紹介料を受け取る」形なので、建設業務では成立しない。採用代行は採用の実務を代わりに動かすサービスで、雇用関係は最初から自社と応募者の間に結ばれる。だから建設業務でも使える。
紹介という近道が塞がれている以上、勝負は地味な運用のほうで決まる。求人票を書き直し、出し先を選び、応募に速く反応する。それを続けられるかどうかで、同じ求人でも結果が変わる。
自社の職種は紹介を使えるのか、使えないならどこから手をつけるか。今の求人と応募数をお持ちいただければ、無料相談で一緒に整理する。