1. 建設業だけが使える助成金がある
採用にお金をかける前に、まず確認しておきたいことがある。建設業には、建設業だけが対象の助成金があるということだ。厚生労働省が「建設事業主等に対する助成金」としてまとめており、建設労働者の雇用環境の改善や技能の向上に取り組んだ場合に受けられる。
これが意外と知られていない。「助成金は書類が面倒で結局使わない」と敬遠されがちだが、若手を1人採るだけで動く金額があるし、採った人が定着したときにもらえる枠まで用意されている。
助成金は毎年、内容と金額が見直される。この記事の数字はすべて厚生労働省「建設事業主を対象とした助成金のご案内」令和8年4月版の各コースの個別ページから取っている。申請前には必ず最新版と支給要領を確認してほしい。出典は記事末にまとめた。
まず「自社が対象になるか」を確認する
金額を見る前に、対象の線引きを押さえておきたい。ここを外すと、あとの話が全部意味をなくす。
- 建設労働者を雇用していない「一人親方」、および同居の親族のみを使用して建設事業を行っている事業主は、「建設事業主」に当たらない。つまり対象外になる。
- 中小建設事業主とは、資本金の額もしくは出資の総額が3億円以下、または常時雇用する労働者数が300人以下の建設事業主をいう。
- コースによって「Aの建設事業主」に限られるものがある。Aの建設事業主とは、「建設の事業」の雇用保険料率(令和8年度は16.5/1,000)の適用を受ける建設事業主のこと。建設業の許可を持っていても、雇用保険料率が「一般の事業」の区分なら「Bの建設事業主」になる。
- そしてほぼ全コースに共通する要件が「雇用管理責任者を選任していること」。これは建設労働者の雇用の改善等に関する法律で事業所ごとに選任が義務づけられているもので、助成金の申請にあたっても必要になる。
建設事業主が使えるコースは、令和8年度は次のとおりだ。まず全体像を見てほしい。
| 助成金 | コース | どんなときに使うか | 金額(令和8年度) | 一事業年度の上限 |
|---|---|---|---|---|
| トライアル雇用助成金 | 若年・女性建設労働者トライアルコース | 35歳未満または女性を試用で雇う | 1人あたり月4万円 | 12万円(1人あたり) |
| 人材確保等支援助成金 | 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) | 若手・女性の入職や定着のための取り組みを行う | 経費の3/5(中小)/定着で1人42万円 | 200万円 |
| 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) | 女性専用の作業員施設を借りる/作業員宿舎等を借りる(石川県のみ) | 賃借料等の3/5(女性専用施設) | 90万円(女性専用施設) | |
| 建設キャリアアップシステム等活用促進コース | CCUSを活用して昇格・賃上げを行う | 技能者1人につき16万円 | 160万円 | |
| 人材開発支援助成金 | 建設労働者認定訓練コース | 都道府県の助成を受けて認定訓練を実施する | 経費の1/6/賃金3,800円/日 | 1,000万円(賃金助成分) |
| 建設労働者技能実習コース | キャリアに応じた技能実習を実施する | 経費の3/4/賃金9,500円/日(20人以下) | 500万円 |
この中で採用に直接効くのは、上の3つ(トライアルコース・職場づくりコース・CCUS活用促進コース)だ。順に見ていく。
2. 若手・女性を試用で雇うとき|1人あたり月4万円
いちばん使いやすいのが若年・女性建設労働者トライアルコースだ。35歳未満の若手または女性を、試用雇用(トライアル雇用)で受け入れたときに助成される。
いくらもらえるか
トライアル雇用労働者1人につき最大で月4万円、上限は12万円(4万円/月×3か月)。トライアル雇用期間は原則3か月だ。実際に就労した日数の割合によって、月ごとの支給額が変わる。
| 就労した日数の割合 | その月の支給額 |
|---|---|
| 75%以上 | 4万円 |
| 50%以上75%未満 | 3万円 |
| 25%以上50%未満 | 2万円 |
| 0%より上25%未満 | 1万円 |
| 0% | 不支給 |
割合は「その月に実際に就労した日数 ÷ その月に就労を予定していた日数」で計算する。
会社側の条件
- Aの中小建設事業主であること(「建設の事業」の雇用保険料率の適用を受ける中小建設事業主)
- 雇用管理責任者を選任していること
- トライアル雇用助成金のうち、一般トライアルコースまたは障害者トライアルコースの支給決定を受けること
雇い入れる人の条件
- 35歳未満、または女性であること
- 建設現場作業に従事すること(建設作業に従事する者、または施工管理を行う者のみが対象)
ポイントは建設のトライアルコースは単独では使えないことだ。まず一般トライアルコースの支給決定を受けたうえで、建設分野の上乗せとして受け取る形になる。
3. 採った人が定着したとき|1人42万円
採用担当者にいちばん知ってほしいのがここだ。若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)には、採った人が続いたときに支給される「定着助成」がある。
「入職前の魅力発信から入職後の育成・定着のための事業」を実施し、経費等助成の支給決定を受けたあと、対象となる新規入職者が6か月間離職せずに定着した場合、対象労働者1人につき42万円が支給される。対象は一事業年度あたり3人まで、126万円が上限だ。
経費等助成と賃金向上助成
定着助成の前提になるのが経費等助成だ。若手・女性の入職や定着を図るための事業を行った場合、支給対象費用の一定割合が助成される。
- 中小建設事業主:支給対象費用の3/5(60%)
- 中小建設事業主以外:支給対象費用の9/20(45%)
- 雇用管理に関して必要な知識を習得させる研修の受講に関する事業を実施した場合:対象労働者1人につき9,500円/日(1日3時間以上受講した日が対象・最大6日分)
さらに、経費等助成の支給決定を受けたあとに賃金要件を満たすと、賃金向上助成として支給対象費用の3/20(15%)が上乗せされる(研修受講の場合は1人につき2,000円/日)。
算定対象とする全ての建設労働者の毎月決まって支払われる賃金を、支給対象事業終了日の翌日から起算して1年以内に5%以上増加させ、実際に支払うこと。「毎月決まって支払われる賃金」は基本給および諸手当(労働協約・就業規則・労働契約等に明示されているものに限る)を指す。判定は改定後3か月間の賃金総額と改定前3か月間の賃金総額の比較で行われる。
また、一定期間中に事業主都合による離職者を発生させていないことも必要になる。
このコースの上限は、経費等助成+賃金向上助成+定着助成の合計で200万円(支給申請日を基準とし、一事業年度4月1日〜3月31日あたり)だ。
どんな取り組みが対象になるか
対象となる事業は複数あるが、採用と定着に近いものを挙げると次のようになる。
- 建設業の役割や魅力を伝える啓発活動(講習会・現場見学会・体験学習・インターンシップなど)
- 技能の向上を図る活動(内定者への教育訓練、新規入職者への研修会、公的資格の取得に関する講習会など)
- 雇用管理に関して必要な知識を習得させる研修の実施・受講
- 女性労働者の入職や定着の促進に関する事業(女性向けキャリアパスの作成、育児支援制度のセミナーなど)
定着助成を狙う場合は、①魅力を伝える啓発活動を実施し、②その参加者の中から採用した人を対象に技能向上の取り組みを行い、③雇用管理責任者等に雇用管理研修を受講させる——この3つを同一の事業年間計画期間(1年間)内にすべて実施する必要がある。現場見学会などで人を集め、その参加者から採用し、入った人を育てて、研修も受ける、という一連の流れを1年でつくる設計だ。なお事業実施期間は最大1年間である。
4. 建設キャリアアップシステムを活用するとき|技能者1人16万円
建設キャリアアップシステム等活用促進コース(雇用管理改善促進事業)は、CCUSを活用して雇用管理の改善に取り組んだ場合のコースだ。
算定対象となる建設技能者1人につき16万円。ここで言う算定対象は、レベル判定で昇格評定を受け、賃金が5%以上増加した技能者である。上限は一事業年度あたり160万円だ。
要件はやや厳しい
- 中小建設事業主であること
- 雇用管理責任者を選任していること
- 雇用する全ての建設技能者について、CCUS技能者登録が完了していること(「詳細型登録」であることが必要)
- レベル判定で昇格評定を受けた建設技能者の賃金を5%以上増加させること(昇格評定を受けた技能者の賃金を増額させる旨を給与規程や賃金テーブル、手当規程等に定めたうえで、実際に支払うことが必要)
- 事業開始日の6か月前から支給申請書の提出日までの間に、雇用する雇用保険被保険者を解雇等の事業主都合により離職させていないこと
「一部の技能者だけ登録している」では要件を満たさない点に注意したい。逆に言えば、すでに全員の詳細型登録が済んでいる会社にとっては、昇格と賃上げをセットで進めるだけで使えるコースだ。
5. 育てる・訓練するとき|人材開発支援助成金
採った人を育てる段階で使えるのが人材開発支援助成金の建設分野コースだ。ただしどちらも「単独では使えない」点を先に押さえておきたい。
建設労働者認定訓練コース
- 経費助成:助成対象経費の1/6。ただし都道府県から支援を受けて認定訓練を実施することが要件で、助成対象経費は広域団体認定訓練助成金または認定訓練助成事業費補助金の交付を受けて都道府県が助成対象とした額になる
- 賃金助成:算定対象となる建設労働者1人につき3,800円/日。こちらは人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給決定を受けたことが要件
- 賃金向上助成・資格等手当助成:1人につき1,000円/日
- 上限額:1,000万円(賃金助成+賃金向上助成・資格等手当助成/一事業年度あたり)
- 対象は建設関連の訓練に限られ、経理事務・営業販売的な要素を持つ訓練は対象外
建設労働者技能実習コース
こちらは区分が「中小かどうか」ではなく企業全体の雇用保険被保険者数で分かれる。しかも21人以上の場合は対象労働者の年齢で助成率が変わるので、そこを取り違えないようにしたい。
| 区分 | 経費助成 | 賃金助成(1人1日あたり) |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者数 20人以下 | 支給対象費用の3/4(75%) | 9,500円 CCUS技能者情報登録者は10,450円 |
| 21人以上・35歳未満の労働者 | 支給対象費用の7/10(70%) | 8,550円 CCUS技能者情報登録者は9,405円 |
| 21人以上・35歳以上の労働者 | 支給対象費用の9/20(45%) | 8,550円 CCUS技能者情報登録者は9,405円 |
| 中小建設事業主以外 | 支給対象費用の3/5(60%) 自ら雇用する女性建設労働者に係る技能実習の場合のみ | 対象外 |
細かいが実務で効く上限がいくつかある。経費助成は1つの技能実習について1人あたり10万円が上限。賃金助成は1つの技能実習について1人あたり20日分が上限で、通学制または同時双方向型の通信訓練で実習時間が3時間以上の訓練日のみ対象になる。賃金向上助成・資格等手当助成は、経費助成分が1人あたり2万円上限、賃金助成分が20人以下2,000円/日・21人以上1,750円/日だ。
コース全体の上限は500万円(経費助成+賃金助成+賃金向上助成・資格等手当助成/一事業年度あたり)。技能実習の期間は原則6か月以内で、労働者本人から費用を徴収する場合は対象外になる。
ここで注目したいのは、CCUSの技能者情報登録者だと賃金助成が上がる点だ(9,500円→10,450円、8,550円→9,405円)。CCUS活用促進コースと合わせて考えると、登録を進めることが2つのコースで効いてくる。
どんな講習が対象になるのか
「資格を取らせたいが助成が出るのか」という質問が多いので、対象になる技能実習の種類を挙げておく。パンフレットでは次の7つに分類されている。
- 建設工事における作業に直接関連する実習(下の②〜⑥以外のもの)
- 労働安全衛生法で定める特別教育
- 労働安全衛生法に基づく危険有害業務従事者に対する安全衛生教育
- 労働安全衛生法に基づく教習および技能講習
- 職業能力開発促進法に規定する技能検定試験のための事前講習
- 建設業法施行規則に規定する登録基幹技能者講習
- 技能継承に係る指導方法の向上のための講習
特別教育の例としては、玉掛け/高所作業車(10m未満)の運転/小型車両系建設機械の運転/ローラーの運転/移動式クレーン(1t未満)の運転/アーク溶接/足場の組立て・解体・変更の作業/フルハーネス型墜落制止用器具を用いた業務/ロープ高所作業などがパンフレットの表に列挙されている。現場でよく受けさせる講習がひととおり入っている。
また建設業法で定める技術検定(施工管理技士)に関する講習も、受講開始日において雇用保険法の教育訓練給付金の支給対象であれば対象になる。技能工だけでなく、施工管理を育てる費用にも使えるということだ。
種類ごとに「誰に受けさせるか」で対象・対象外が分かれる(とくに労働安全衛生法の教習・技能講習は対象になる区分が限られている)。受けさせたい講習が対象かどうかは、パンフレットの一覧表と都道府県労働局で確認してほしい。
加えて、次のものは対象にならない。職場訓練(日常の職場で業務に就かせたまま行う訓練)/営業活動の一環として行う技能実習/労働者本人から費用を徴収する場合/都道府県から補助や助成を受けて行われる認定訓練(後者は認定訓練コースの側で扱う)。都道府県の職業能力開発施設や高齢・障害・求職者雇用支援機構の施設が実施する訓練の受講料・教科書代も対象外だ。
計画届は技能実習を実施しようとする日の3か月前から原則1週間前までに提出する。ただし登録教習機関・登録基幹技能者講習実施機関・職業訓練法人などが実施する講習を受講させるだけなら、計画届の提出は不要だ。
6. 宿舎や施設は「借りる」費用への助成
作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)は施設に関するコースだが、ここは誤解されやすい。助成の対象は「買って設置する費用」ではなく「賃借料等」だ。備品費も賃借の場合に限られる。
女性専用作業員施設設置経費助成(全国)
- 支給対象費用(賃借料等)の3/5(60%)。賃金要件を満たせば賃金向上助成として3/20(15%)が上乗せ
- 助成対象となる期間は1か月以上12か月以下。ただし当該建設工事現場における女性建設労働者の就労日数が10日に満たない月の賃借料は対象外
- 対象になるのは更衣室・浴室・トイレ・シャワー室の賃借料と、その搬入・設置工事費、備え付け備品の賃借料など
- 権利金・敷金・礼金、光熱水料費、管理費、撤去費などは対象外
- 上限額:90万円(経費助成+賃金向上助成/一事業年度あたり)
作業員宿舎等経費助成(石川県が対象)
これは令和6年能登半島地震からの復旧・復興のために設けられたコースだからだ。厚生労働省のリーフレットには「能登半島地震からの復旧・復興にあたり建設需要が増大していく中で、被災地(石川県)の工事現場で作業員宿舎等を賃借する中小建設事業主に対して経費の一部を助成します」と書かれている。
つまり他の都道府県には存在しない特例であって、各県に同じものがあるわけではない。同じ「作業員宿舎等設置助成コース」でも、前項の女性専用作業員施設のほうは全国で使える。石川県以外の会社は前項を見てほしい。
対象になるのは石川県に所在する工事現場で、しかも令和6年1月1日以降に開始したものだ。そこで作業員宿舎・賃貸住宅・作業員施設のいずれかを賃借により設置する場合に助成される。
- 作業員宿舎(建設労働者2人以上が一つの敷地内に居住し、生活を営むことができるもの):建設労働者1人あたり25万円。なお「建設労働者の数」は単純な人数ではなく、入居労働者が1か月(30日)間に民間工事に従事する日数の合計 ÷ 入居労働者の総稼働日数で算定する
- 賃貸住宅:賃借料等の2/3。1人あたり最大1年間・月額3万円が上限
- 作業員施設(食堂・休憩室・更衣室・浴室・トイレ・シャワー室):賃借料等の2/3
- 上限額:200万円(合計/一事業年度あたり)
- 計画届は賃借事業を開始しようとする日の原則2週間前まで
ここで採用に関係するのは「賃貸住宅」の定義だ。パンフレットでは「建設労働者を遠隔地より新たに採用するために賃借する住宅」と説明されている。遠方から人を採るときの住まいの費用が助成対象になる、という意味だ。ただし繰り返しになるが、このコースは石川県が対象である。
7. 廃止された助成と、業種を問わない助成金
生産性を向上させた建設事業主に対して助成額を増額する「生産性向上助成」はすでに廃止されている。ただし一部の助成金では経過措置として現在でも適用される。対象は人材開発支援助成金の建設労働者認定訓練コース(賃金助成)と建設労働者技能実習コース(経費助成・賃金助成)で、令和4年度までに認定訓練または技能実習を開始した場合に限られる。
ネット上の古い記事には廃止前の情報が残っていることがある。金額を前提に計画を立てる前に、必ず最新の公式資料を見てほしい。
建設分野のコースとは別に、業種を問わず使える雇用関係の助成金もある。前述のとおり、建設のトライアルコースは一般トライアルコースの支給決定が前提になっているので、まずそちらを見ることになる。
ただし業種を問わない助成金は制度の新設・廃止・要件変更が頻繁だ。この記事では個別の金額を挙げず、名前だけ挙げておく。金額と要件は厚生労働省の雇用関係助成金のページで確認してほしい(リンクは記事末の出典)。
採用に関係するものとして、令和8年度の一覧には次の名前で載っている。
- トライアル雇用助成金(一般トライアルコース):安定就業を希望し、離転職を繰り返す人などを試行的に雇い入れる場合
- 特定求職者雇用開発助成金:高年齢者・障害者・就職氷河期世代を含む中高年層などを継続して雇用する労働者として雇い入れる場合
- 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース):雇用期間の定めのない労働者の中途採用を拡大する場合
- 産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース):生産性向上に資する取組等に必要な新たな人材を雇い入れる場合
- 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース):雇用管理制度や業務負担軽減機器等の導入で離職率の低下を図る場合
- キャリアアップ助成金(正社員化コース):契約社員・パートなどを正社員に転換する場合
- 65歳超雇用推進助成金:65歳以上への定年引上げなどを実施する場合
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース):外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行う場合
建設業だけのコースと違い、これらは雇用保険適用事業所であれば業種を問わず対象になる。建設分野のコースと併せて検討する余地がある。
採用ではないが、採用に効く助成金
ひとつだけ、建設業を名指しで対象にしている別枠を挙げておく。働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)だ。令和8年度も建設業向けのコースが用意されていて、労働時間の削減や週休2日制の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主が対象になる。
助成上限額は選ぶ成果目標によって変わる。時間外労働の上限を下げる目標の場合、事業実施前が月80時間超で、実施後に月60時間以下にできたときが250万円。事業実施前が月60時間超〜80時間以下で、実施後に月60時間以下にできたときが200万円だ。補助率は3/4(常時使用する労働者数が30人以下で、機器やソフトウェアの導入を行い所要額が30万円を超える場合は4/5)。
これは採用の助成金ではない。しかし建設業の採用で最も効く条件は、実務上「休みがあるか」だ。週休2日に近づけるための投資に助成が出るなら、求人票に書ける条件そのものが変わる。採用の打ち手として検討する価値がある。
8. 申請の窓口と、つまずきやすいところ
申請窓口は都道府県労働局だ(コースによってハローワークが関わる手続きもある)。実務でつまずきやすいのは次の4点だ。
雇用管理責任者を選任していない
建設分野のコースは、ほぼ共通で「雇用管理責任者を選任していること」が要件になっている。ここが抜けていると、ほかの条件を満たしていても申請できない。まずここを確認する。
順番を間違える
建設のトライアルコースは一般トライアルコースの支給決定が前提。職場づくりコースの定着助成は経費等助成の支給決定が前提。認定訓練コースの賃金助成は人材育成支援コースの支給決定が前提。先に取るべき助成が決まっているので、順番を確認してから動く。
計画届を出す前に動いてしまう
多くのコースは事業を開始しようとする日の原則2週間前までに計画届を提出する必要がある(CCUSコースは増額改定日の属する月の初日の6か月前から2か月前の前日まで)。始めてから申請しようとしても間に合わない。
事業年度をまたいでしまう
上限額は「支給申請日を基準とし、一事業年度(4月1日〜3月31日)あたり」で計算される。また定着助成を狙う一連の取り組みは、同一の事業年間計画期間(1年間)内に実施する必要がある。年度末に思い出して駆け込むと間に合わないので、年度の頭に計画を立てるのが確実だ。
9. 自分の都道府県で使えるものを調べる
ここまではすべて国(厚生労働省)の助成金だ。これとは別に、都道府県や市区町村が独自に出している補助金もある。ただしこの記事では47都道府県分の一覧を作らない。理由は3つある。
- 年度ごとに変わる。募集期間が決まっていて、予算枠に達すると締め切られる。一覧にした瞬間から古くなっていく
- 1社では申請できないものがある。たとえば北海道の「建設産業ミライ振興支援事業補助金」(令和8年度)は、対象が建設業協会とその会員である地方建設業協会などの団体で、1社単独では申請者になれない
- 網羅した一覧がどこにも存在しない。全国建設業協会が毎年出している「地域建設企業が利用できる助成金・補助金一覧」も、収録されているのは国の制度だ
そこで、自分の会社が使えるものを自分で確かめる手順を置いておく。この順番なら、古い情報に振り回されずに済む。
1. 国の助成金は、都道府県労働局に聞く
この記事で挙げた建設分野のコースは、すべて申請窓口が都道府県労働局だ。「人材確保等支援助成金 ○○県」のように県名で調べる人が多いが、制度の内容は全国共通で、変わるのは窓口だけである。自分の県の労働局は厚生労働省の所在地一覧から辿れる。都道府県労働局の所在地一覧(厚生労働省)
2. 県独自の補助金は、県の建設業担当課を見る
「○○県 建設業 補助金」で検索し、ドメインが lg.jp で終わる県の公式ページを開く。所管はたいてい建設政策課・建設企画課といった名前の課だ。まとめサイトの一覧は年度が古いものが混ざるので、必ず県の公式ページで今年度の募集要領を見てほしい。
県独自のものは、採用そのものより資格取得・技能講習の費用補助、女性の入職促進、ICT施工の導入といった切り口が多い。「採用に直接使えるものはない」という県もある。
3. 「今年度も募集しているか」を必ず確認する
確認すべきは3点だけだ。今年度の募集があるか/申請できるのは事業者か団体か/募集期間と予算枠。この3つが揃って初めて、自社が使える制度になる。ここを飛ばして金額だけ見て動くと、申請できないまま計画が止まる。
10. ゴリラ採用の考え方
ゴリラ採用は、建設業に完全特化した採用代行(RPO)だ。現場の作業職は有料の人材紹介が使えない——その制約を前提に、求人媒体の運用と応募対応・面接調整までをまるごと代行している。
助成金は「採用の費用を後ろから支える仕組み」であって、応募が来なければ動かない。若手を採れば月4万円、6か月定着すれば42万円という枠があっても、そもそも応募が1件も来なければ使えないままだ。だからこそ、まず応募が来る状態をつくることが先にくる。
助成金の申請そのものは都道府県労働局が窓口で、社会保険労務士の領域でもある。ゴリラ採用が担うのは、その手前——応募を集めて採用まで進める部分だ。「若手を採りたいが応募が来ない」という段階なら、実際の求人内容に合わせて打ち手を無料相談でお伝えしている。