1. 建設業は高卒の就職先として2位|12,654人という現実
高卒採用の話を始める前に、建設業がこの市場でどういう位置にいるのかを確認しておきたい。結論から書くと、建設業は高校新卒者の就職先として、製造業に次ぐ2位である。
文部科学省の学校基本調査で、令和7年3月に高校を卒業して就職した人の産業別内訳を見ると、次のようになっている。
| 産業 | 就職者数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 製造業 | 50,914人 | 39.9% |
| 建設業 | 12,654人 | 9.9% |
| 卸売業・小売業 | 11,563人 | 9.1% |
| 公務 | 10,631人 | 8.3% |
| 運輸業・郵便業 | 7,253人 | 5.7% |
| 就職者計 | 127,501人 | 100% |
男子に限ると、この比率はさらに上がる。男子の就職者81,619人のうち建設業に入ったのは11,011人で、男子高卒就職者のおよそ7人に1人が建設業に入っている計算になる。高卒採用は、建設業にとって縁の薄い話ではない。むしろ中心にある入口だ。
厚生労働省の集計では、建設業が高校新卒者向けにハローワークへ出した求人は92,980人分(令和8年3月末現在)で、前年の90,682人分から2.5%増えている。産業別では製造業に次ぐ規模だ。一方、実際に建設業へ就職した高卒は前掲のとおり1万2千人台にとどまる。求人数は延べの採用予定人数、就職者数は学校基本調査による実際の入職者数で、集計の経路も範囲も違うため単純な充足率にはならないが、出している枠に対して入ってくる人数が大きく足りていないという関係は変わらない。
高卒全体の求人倍率は4.12倍(令和8年3月末現在)。就職内定率は98.9%で、就職を希望した生徒はほぼ全員が決まる市場である。生徒が余っているのではなく、会社が選ばれる側に立っている。この前提を踏まえたうえで、ルールと日程の話に入る。
2. 高卒採用のルールは法律ではない|決めているのは6者
高卒採用について調べると「ルールが厳しい」「解禁日が決まっている」という説明に必ず行き当たる。ではその根拠はどこにあるのか。ここを正確に押さえておくと、あとの判断がぶれない。
日程そのものを定めた法律の条文はない。根拠になっているのは、文部科学省初等中等教育局長・厚生労働省職業安定局長・厚生労働省人材開発統括官の連名で出される通知である。令和9年3月卒についての通知(令和8年2月25日付)には、こう書かれている。
令和9年3月の新規中学校・高等学校等卒業者については、全国高等学校長協会、主要経済団体(一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所及び全国中小企業団体中央会)、文部科学省及び厚生労働省において検討を行った結果を踏まえ、下記によることとしました。
つまり、決めているのは学校側の団体(全国高等学校長協会)、経済団体3つ(経団連・日商・全国中小企業団体中央会)、そして文部科学省と厚生労働省の6者だ。その検討結果を、国が都道府県教育委員会と都道府県知事に通知として流している。よく「三者間の申合せ」と呼ばれるのは、学校・企業・行政という3つの立場を指した言い方である。
ただし「法律ではないから守らなくてよい」という話ではない。理由は2つある。
ひとつは、高校生の職業紹介そのものは職業安定法に根拠があること。同法26条は、ハローワークが学校と協力して学生生徒等の職業紹介にあたるよう定めている。そのうえで、学校が職業紹介を行うルートは2つ用意されている。27条により、ハローワークの業務の一部を学校長が分担する形(業務分担校)と、33条の2により、学校長が厚生労働大臣に届け出て無料職業紹介事業を行う形だ。生徒に求人を紹介しているのは学校の先生だが、その先生は法律上の職業紹介の担い手として動いている。
もうひとつは、この日程を守らない求人は、学校側で受け付けてもらえないこと。次章以降で見るとおり、手続の入口でふるいにかけられる仕組みになっている。
厚生労働省は「新規学校卒業者の採用に関する指針」を出している。募集人員について「若干名」「○○人以内」といった不明確な表現を避けること、定められた採用選考開始の期日を守ること、採否の結果を明確に伝えること、内定は文書で条件と取消し事由を明示することなどが並ぶ。日程の通知とあわせて、高卒採用の作法はここに書かれている。
3. 令和9年3月卒の日程|動き出しは6月1日だった
いまの高校3年生(令和9年3月卒業予定)の日程は次のとおり定められている。
- 令和8年6月1日会社が動くハローワークで求人申込みの受理と、確認のための求人票の受付が始まる
- 令和8年7月1日会社が動く確認済みの求人票が会社へ返される。学校での求人申込みの受理も始まり、学校訪問ができるようになる。自社サイトやチラシでの募集告知(文書募集)もこの日から
- 夏休み会社が動く応募前職場見学。学校の教育活動としての職場体験・実習も、選考開始前に実施できる
- 令和8年9月5日学校・生徒が動く推薦文書の到達が可能になる(沖縄県のみ8月30日)
- 令和8年9月16日学校・生徒が動く選考開始。採用内定の開始も同じ日以降
- 10月以降学校・生徒が動く多くの県で複数応募が解禁される(解禁日は県ごとに違う)。9月末で決まらなかった生徒が次の会社を見に動き出す
ここで見落とされやすいのが、会社側の動き出しが6月1日だという点である。9月16日は選考の日であって、準備の日ではない。6月にハローワークへ求人票を出し、7月に学校へ持っていき、夏の間に生徒と学校に知ってもらう。この3か月半があって、はじめて9月に応募が来る。
求人活動のための学校訪問についても、通知は原則としてハローワークの確認を受けた求人票で学校に求人申込みを行った日以降とし、学校の事前の了解があればハローワークに求人申込みを行った日以降でも差し支えないとしている。7月1日に学校が動き出したとき、その場に自社の求人票が並んでいるかどうかで差がつく。
なお、中学校卒業者については推薦・選考の開始が令和9年1月1日以降(積雪地の一部は令和8年12月1日から可)と別に定められている。
4. 確認印のない求人票では、学校は生徒を推薦しない
高卒採用が中途採用と決定的に違うのが、求人票の出し方である。通知は次のように定めている。
求人申込みを行おうとする事業所は、当該事業所を管轄する安定所に求人申込書を提出して、選考期日、求人内容等について適正であることの安定所の受理・確認(求人票への受理・確認印の押印)を受けた後、当該求人票により高等学校等に求人申込みを行わなければならないこととすること。
そして、この順番を踏まなかった場合はこうなる。
したがって、この手続によらない求人申込みのあった場合には、高等学校等は、生徒の推薦を行わず、安定所の受理・確認印の押印のある求人票の提出を求め、その提出後、推薦を行うものとすること。
つまり学校へ直接持ち込んでも、確認印がなければ推薦の手前で止まる。求人票を書いて学校に持っていく前に、ハローワークで内容を見てもらう工程が要る。求人内容が適正かどうかを、生徒に届く前段でチェックする設計になっている。
上記の手続について、通知は「(※)民間職業紹介事業者を活用する場合は、この限りでない。」というただし書きを付けている。民間の職業紹介を使うのであれば、ハローワークの確認印という工程を経ないルートがあるという意味だ。
ところが建設会社の現場職は、この例外を使えない。職業安定法32条の11第1項が、有料職業紹介事業者は建設業務に就く職業を紹介してはならないと定めているためである。条文はこう書いている。
建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
この範囲に入る職種は、そもそも有料の職業紹介という選択肢が存在しない。したがって高卒採用でも、学校とハローワークを通すルート一本になる。施工管理・設計・事務など建設業務に当たらない職種は対象外で、この線引きの詳細は建設業で人材紹介が禁止される理由の記事で条文をもとに整理している。
言い換えれば、建設業の現場採用における高卒の入口は、ハローワークで確認を受けた求人票と、学校の先生との関係にほぼ集約される。ここを飛ばして採る方法は、制度上用意されていない。
5. 選考の前に生徒と会う方法|職場見学と、自社での募集告知
「では9月16日まで、生徒とは一切接触できないのか」——ここも誤解されやすい。通知は、選考の前に生徒が会社を見に来る仕組みを想定している。
ひとつが応募前職場見学である。通知は注記でこう位置づけている。
応募前職場見学は、生徒が事前に職業や職場への理解を深めるために行うものであり、採用選考の場とならないよう十分留意すること。
つまり見せるのはよいが、そこで選考をしてはいけない。面接のような質疑をしたり、その場で内定めいた話をしたりすると、選考開始期日の趣旨から外れる。実施にあたっては、生徒や学校に過度な負担が生じないよう配慮することも求められている。
学校の教育活動として行われるものについては、さらに明確に書かれている。
学校が教育活動として行う、企業現場における職場体験や実習等については、推薦及び選考の開始期日以前に実施することを妨げるものではないこと。
建設業は、現場を見せられることが強みになる業種である。求人票の文字だけでは伝わらないものが、1日現場を見ればわかる。夏に見学や体験を受け入れられるかどうかが、9月の応募数に直結する。
あわせて、ハローワークが企業の採用担当者と学校の進路指導担当教諭の情報交換会や、合同企業説明会・面接会を開催することも通知に書かれている。学校とのつながりがまだない会社は、まずこうした場に出るのが現実的な入口になる。
求人票とは別に、広告や自社サイトで募集を告知することを通知は「文書募集」と呼び、開始時期を令和8年7月1日以降としている。そのうえで3つの条件が付く。
安定所において確認を受けた求人であって、当該求人の求人票記載内容と異なるものでないこと。
広告等掲載に当たっては、事業所を管轄する安定所名及び求人の求人番号を掲載すること。
応募の受付は、学校又は安定所を通じて行うこと。
つまり、ハローワークで確認を受けた求人票と中身をそろえること、ハローワーク名と求人番号を載せること、応募は学校かハローワークを通すことの3点である。中途採用のように自社サイトのフォームで直接応募を受ける形は取れない。中学校卒業者を対象とする文書募集は行わないこととされている。
6. 一人一社制は9月だけの話|解ける時期は県ごとに違う
高卒採用のもうひとつの特徴が、一人一社制である。生徒が同時に応募・推薦を受けられる会社を1社に限る取り扱いで、都道府県ごとの高等学校就職問題検討会議で申し合わされている。
ここで押さえておきたいのは、一人一社制が年度を通して続くわけではないことだ。厚生労働省が公開している令和9年3月卒業者向けの一覧(令和8年6月現在)を47都道府県すべて確認すると、内訳はこうなっている。
| 区分 | 都道府県数 |
|---|---|
| 期日を設けず1人1社制のまま | 0 |
| 当初から複数応募が可能 | 7県 |
| 一定期日後に複数応募が可能 | 40都道府県 |
1人1社のまま動かない県はひとつもない。大半の県は「9月中は1人1社制、10月1日以降は1人2社まで」といった形で、秋に複数応募が解禁される。ただしその日付は県によって違う。10月1日とする県が多い一方、10月中旬とする県もあれば、11月1日とする県もある。解禁後に応募できる社数も2社までのところと3社までのところがある。
採用する側から見ると、この日付は「自社にもう一度チャンスが来る日」にあたる。9月に第一志望が決まらなかった生徒が、次の会社を見に動き出す時期だからだ。自社が求人を出す県の扱いは、厚生労働省の高卒就職情報WEB提供サービスで公開されている一覧で確認できる。県外の生徒に応募してもらう場合、応募先の都道府県の申合せが適用されると明記している県もあるため、複数県で募集するなら該当する県の分を見ておきたい。
7. 9月末で約4万5千人が未内定|年度後半に残っているもの
「9月16日の選考開始に間に合わなかった。今年はもう無理か」——この記事を9月に読んでいる方が一番知りたいのはここだと思う。数字で見ていく。
厚生労働省は高卒の就職内定状況を年度内に複数回公表している。直近で1学年分がそろっている令和8年3月卒について、9月末と最終の3月末を並べるとこうなる。
| 9月末現在 | 3月末現在(最終) | |
|---|---|---|
| 求人数 | 483,080人 | 498,722人 |
| 求職者数 | 122,673人 | 121,175人 |
| 就職内定者数 | 77,725人 | 119,896人 |
| 就職内定率 | 63.4% | 98.9% |
| 求人倍率 | 3.94倍 | 4.12倍 |
読み取れることは2つある。
ひとつは、9月末の時点で約4万5千人が決まっていないこと。求職者122,673人に対して内定者は77,725人なので、その差は44,948人になる。選考が始まって半月では、まだ3人に1人以上が決まっていない。
もうひとつは、求人数が年度後半に増えていること。9月末の483,080人から3月末の498,722人へ、15,642人分増えている。10月以降に高卒求人を出す会社が現実にいるということだ。前章で見た複数応募の解禁と、この求人の追加が重なるのが秋から冬にかけての時期になる。
最終的な内定率は98.9%まで上がる。裏を返せば、年度後半に動く生徒は「まだ決まっていない生徒」であって、選択肢が豊富な状態ではない。9月に動けなかった年の巻き返しとして年度後半を使うのは有効だが、それを毎年の設計にはできない。翌年は6月1日から動く前提で組み直したほうがいい。
今年これから動くのであれば、順番はこうなる。まずハローワークに求人票を出して確認を受ける。次に、自社が求人を出す県で複数応募が解禁される日を調べる。そのうえで、まだ生徒が決まっていない高校の進路指導の先生に、確認印のある求人票を持って会いに行く。学校側も未内定の生徒を抱えている時期なので、条件の合う求人は歓迎される。
8. 18歳未満には、現場のほとんどを任せられない
ここは高卒採用に固有の、そして建設業では特に重い論点である。高校3年生の中には、卒業時点でまだ18歳になっていない人がいる。4月に入社してから誕生日を迎えるまでの間、労働基準法の年少者の規定が適用される。
まず、危険有害業務の就業制限がある。労働基準法62条を受けた年少者労働基準規則8条は、18歳未満を就かせてはならない業務を46号にわたって列挙している。建設現場に関係するものを抜き出すと次のようになる。
| 号 | 就かせてはならない業務 |
|---|---|
| 3号 | クレーン、デリック又は揚貨装置の運転 |
| 8号 | 直流750ボルト・交流300ボルトを超える電圧の充電電路又はその支持物の点検、修理又は操作 |
| 10号 | クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛け(2人以上で行う玉掛けの補助作業を除く) |
| 12号 | 動力により駆動される土木建築用機械の運転 |
| 23号 | 土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5メートル以上の地穴における業務 |
| 24号 | 高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務 |
| 25号 | 足場の組立、解体又は変更(地上又は床上における補助作業を除く) |
| 39号 | さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務 |
条文の書きぶりも見ておきたい。24号と25号はこう定めている。
高さが五メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務
足場の組立、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く。)
重機に乗れない、5メートル以上の高さで作業できない、足場を組めない、玉掛けができない。現場の中核業務がほぼ外れることになる。加えて労働基準法63条により、坑内労働も禁止されている。
労働時間の扱いも違う。同法60条1項は、時間外・休日労働に関する36協定の規定や変形労働時間制の規定を満18歳未満には適用しないと定めている。18歳未満は残業ができないということだ。深夜業についても61条1項がこう定めている。
使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。
ただし書きで、交替制によって使用する満16歳以上の男性は除かれている。
手続としては、同法57条により18歳未満の年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けることが求められる。同法58条は、親権者や後見人が未成年者に代わって労働契約を結ぶことを禁じている。契約は本人と結ぶ。
入社時点で18歳未満の社員がいる前提で、最初の数か月の配置を組んでおく必要がある。地上での補助作業、資材の準備、片づけ、道具の管理、図面や写真の整理といった仕事から始め、誕生日を迎えてから段階的に広げていく形になる。この期間をどう設計するかは、そのまま早期離職の防止にも効いてくる。「入ってみたら何もさせてもらえなかった」と受け取られると、最初の数か月で辞める理由になるためだ。
9. 求人票の先にある義務|聞かれたら答える情報
高卒に限らず新卒求人には、青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)が関わってくる。同法13条2項は、募集を行う者に対してこう定めている。
労働者の募集を行う者及び募集受託者は、学校卒業見込者等募集に当たり、当該学校卒業見込者等募集に応じ、又は応じようとする学校卒業見込者等の求めに応じ、青少年雇用情報を提供しなければならない。
ハローワークや学校に求人を申し込んだ場合についても、同法14条2項が同様に定めている。努力義務ではなく「提供しなければならない」と書かれている点が重要だ。
提供する中身は同法施行規則3条が定めており、3つの類型に分かれる。
| 類型 | 主な項目 |
|---|---|
| 募集・採用の状況 | 直近3事業年度の新規学卒者等の採用者数と、そのうち離職した者の数/男女別の採用者数/平均継続勤務年数 |
| 職業能力の開発・向上 | 研修の有無と内容/自己啓発支援の有無/新入社員に相談担当者を割り当てる制度の有無/キャリアコンサルティングの機会/社内検定の有無 |
| 職場への定着 | 月平均の所定外労働時間/有給休暇の平均取得日数/育児休業の取得状況/役員と管理職に占める女性の割合 |
同規則4条3項により、求めに応じた提供は3つの類型それぞれについて1つ以上を選んで行うこととされている。したがって「離職者数だけを必ず答えなければならない」わけではない。ただし1つ目の類型には直近3年の採用者数と離職者数が含まれており、これを選んで答える形は当然ありうる。ハローワークの高卒求人票にも青少年雇用情報の記入欄があり、そこでは各項目を埋めていくことになる。
ここで効いてくるのが、次章で見る離職率の数字である。若手が続かない状態のまま求人を出すと、その事実自体が生徒と先生に見える形で開示されることになる。
職業安定法施行規則35条2項は、新規学卒者について①募集の中止や募集人員を減らすとき②内定を取り消し、又は撤回するとき③内定期間を延長しようとするときは、あらかじめハローワークと学校へ通知することとしている。さらに同規則17条の4により、通知された内容が厚生労働大臣の定める場合に該当するときは、その内容が公表されることがある。
厚生労働省の「新規学校卒業者の採用に関する指針」も、事業主は採用内定を取り消さないものとするとしたうえで、労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは無効とされる、と注意を促している。受注の見通しが立たない状態で内定だけ先に出すと、あとで動けなくなる。
10. 採ったあと|1年で2割、3年で4割が辞める
入口の話をしてきたが、出口も同じ資料で確認しておきたい。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」で、令和4年3月に高校を卒業して就職した人の3年間を追うと、建設業の数字はこうなる。
| 建設業 | 調査産業計 | |
|---|---|---|
| 就職者数 | 14,102人 | 137,458人 |
| 3年目までの離職者数 | 5,838人(41.4%) | 52,129人(37.9%) |
| うち1年目までの離職者数 | 2,670人(18.9%) | 24,396人(17.7%) |
3年で41.4%、1年目だけで18.9%。産業計と比べても高い。9月に必死で採った1人が、翌年の秋にはいなくなっている可能性が2割近くあるということだ。
ここまで読むとわかるとおり、高卒採用は入口と出口がつながっている。前章のとおり離職者数は求められたら開示する情報であり、辞められるほど翌年の採用が難しくなる。逆に、続いている会社はその数字を見せられる。数字そのものの詳細は建設業の離職率の記事で、辞めさせないための設計は若手の定着の記事で扱っている。
初任給の水準についても、毎年10月前後に地域別最低賃金が改定されるため、前年の求人票をそのまま使い回すと下回ることがある。この点は建設業の最低賃金の記事で計算方法を整理した。
若手を受け入れて育てるための費用には、建設業だけが使える助成金の制度がある。金額と要件は建設業の採用に使える助成金・補助金一覧の記事にまとめた。
11. ゴリラ採用の考え方
高卒採用は、中途採用とは別の競技だと考えたほうがいい。日程が決まっていて、求人票にはハローワークの確認が要り、生徒との接点は学校を通す。民間の紹介という近道は、建設業の現場職には制度上存在しない。つまり準備の早さと、求人票の中身と、学校との関係で決まる。
やることの順番はそれほど複雑ではない。6月にハローワークへ求人票を出し、7月に学校を回り、夏の間に自社を知ってもらい、9月に選考する。18歳未満が入ってくる前提で最初の配置を組んでおく。青少年雇用情報を聞かれても答えられるように、採用者数と離職者数を整理しておく。ただ、この一連を現場を回しながら片手間でやるのが難しい。求人票を作る時期と、現場が最も動く時期が重なっているためだ。
ゴリラ採用は建設業に特化した採用代行として、求人原稿の作成から媒体の選定、応募者への即時対応、面接設定までを引き受けている。高卒採用についても、求人票をどう書くか、どの高校に持っていくか、年度後半に何ができるかといった設計から一緒に考えることができる。今年の巻き返しでも、来年の6月に向けた準備でも、状況を聞かせてもらえれば現実的な進め方をお伝えする。
まずは自社の状況を整理するところからで構わない。相談は無料なので、気軽に声をかけてほしい。
まとめ
- 建設業は高校新卒者の就職先として製造業に次ぐ2位で、令和7年3月卒は12,654人(全体の9.9%)。男子に限れば約7人に1人が建設業へ入っている。
- 建設業が高卒向けにハローワークへ出している求人は92,980人分(令和8年3月末)。出している枠に対して入ってくる人数は足りていない。
- 高卒採用の日程を定めた法律の条文はない。全国高等学校長協会・経団連・日本商工会議所・全国中小企業団体中央会・文部科学省・厚生労働省の6者の検討結果を、3省局長の連名通知で流している。
- 令和9年3月卒は、求人受付6月1日/学校への求人申込み7月1日/推薦9月5日(沖縄県は8月30日)/選考・内定開始9月16日。
- ハローワークの受理・確認印がない求人票では、学校は生徒の推薦を行わない。
- 通知には民間職業紹介事業者を使う場合の例外があるが、建設業務に就く職業は職業安定法32条の11で有料紹介が禁じられているため、現場職では使えない。
- 選考開始前でも応募前職場見学は可能。ただし選考の場にしてはいけない。学校の教育活動としての職場体験や実習も、開始期日前に実施できる。
- 自社サイトやチラシでの募集告知(文書募集)は令和8年7月1日以降。求人票と同じ内容にし、ハローワーク名と求人番号を載せ、応募は学校かハローワークを通す。
- 一人一社制のまま期日を設けない県は0。40都道府県は一定期日後に複数応募が可能になるが、その日付は県ごとに違う。
- 前年は9月末で約4万5千人が未内定だった。求人数も9月末から3月末にかけて1万5千人分増えており、年度後半にも動きがある。
- 18歳未満は重機の運転・高さ5メートル以上の作業・足場の組立て・玉掛けなどに就けず、残業と深夜業もできない。
- 建設業の高卒3年以内離職率は41.4%、1年目までで18.9%。採用者数と離職者数は、求められたら開示する情報にあたる。