1. 建設業の離職率は10.0%|他産業と比べてどうか
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和6年(2024年)の建設業の離職率は10.0%だった。全産業の平均は14.2%なので、建設業のほうが4.2ポイント低い。
意外に思われるかもしれない。人手不足が深刻な業界として語られることが多いため、「離職率も高いはずだ」と受け取られやすいからだ。しかし公的な統計では、そうなっていない。
| 産業 | 離職率 | 入職率 | 入職超過率 |
|---|---|---|---|
| 複合サービス事業 | 7.8% | 6.5% | -1.3pt |
| 金融業,保険業 | 8.0% | 9.1% | +1.1pt |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.8% | 8.8% | 0.0pt |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 | 9.1% | 6.9% | -2.2pt |
| 製造業 | 9.6% | 8.9% | -0.7pt |
| 建設業 | 10.0% | 11.7% | +1.7pt |
| 情報通信業 | 10.2% | 11.2% | +1.0pt |
| 運輸業,郵便業 | 10.2% | 10.0% | -0.2pt |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 11.1% | 12.5% | +1.4pt |
| 教育,学習支援業 | 13.1% | 14.5% | +1.4pt |
| 不動産業,物品賃貸業 | 13.5% | 12.5% | -1.0pt |
| 医療,福祉 | 13.8% | 14.1% | +0.3pt |
| 産業計 | 14.2% | 14.8% | +0.6pt |
| 卸売業,小売業 | 15.1% | 14.7% | -0.4pt |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 19.0% | 20.6% | +1.6pt |
| サービス業(他に分類されないもの) | 20.3% | 21.6% | +1.3pt |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 25.1% | 28.4% | +3.3pt |
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」表4-2より。離職率の低い順に並べた。入職超過率は入職率から離職率を引いたもので、プラスなら1年間で人が増えたことを示す。
16の産業のなかで、建設業は6番目に離職率が低い。そして令和6年は入職超過率がプラス1.7ポイント——つまり、その1年で辞めた人より入った人のほうが多かった。
働き方で分けると違う顔が出る
同じ建設業でも、就業形態で数字が変わる。
- 一般労働者(いわゆる正社員など):離職率9.7%/入職率11.7%/入職超過 +2.0ポイント
- パートタイム労働者:離職率15.9%/入職率12.2%/入職超過 -3.7ポイント
建設業の中心は一般労働者で、その離職率は9.7%とさらに低い。一方パートタイムは15.9%で、出ていくほうが多い。ただし建設業のパートタイム労働者は全体から見ると少数で、業界全体の傾向は一般労働者の数字に近い。
2. 10年分の推移|辞める人は増えているのか
単年の数字だけでは、良くなっているのか悪くなっているのか分からない。そこで10年分を並べた。
| 年 | 離職率 建設業 | 入職率 建設業 | 入職超過率 建設業 | 離職率 産業計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成27年(2015) | 9.5% | 9.8% | +0.3pt | 15.0% |
| 平成28年(2016) | 7.7% | 7.9% | +0.2pt | 15.0% |
| 平成29年(2017) | 8.4% | 9.0% | +0.6pt | 14.9% |
| 平成30年(2018) | 9.2% | 10.0% | +0.8pt | 14.6% |
| 令和元年(2019) | 9.2% | 9.2% | 0.0pt | 15.6% |
| 令和2年(2020) | 9.5% | 10.0% | +0.5pt | 14.2% |
| 令和3年(2021) | 9.3% | 9.7% | +0.4pt | 13.9% |
| 令和4年(2022) | 10.5% | 8.1% | -2.4pt | 15.0% |
| 令和5年(2023) | 10.1% | 10.0% | -0.1pt | 15.4% |
| 令和6年(2024) | 10.0% | 11.7% | +1.7pt | 14.2% |
厚生労働省「雇用動向調査」各年の付属統計表より作成。数値は各年版と翌年版の2つの資料で一致することを確認した。
読み取れることは3つある。
- 離職率は7.7〜10.5%の幅で動いている。10年を通して、産業計(13.9〜15.6%)より一貫して低い。
- 直近3年は10%前後で高止まりしている。平成28年の7.7%と比べれば上がっており、「改善している」とまでは言えない。
- 大きく動いたのは離職率ではなく入職率のほうだ。令和4年に8.1%まで落ち込み、令和6年は11.7%とこの10年で最も高くなった。
令和4年は入職超過率がマイナス2.4ポイントで、この10年で最も人が減った年だった。ただしその原因は離職率が10.5%に上がったことよりも、入職率が8.1%に落ちたことのほうが大きい。建設業の人の増減は、辞める側ではなく入る側で決まっている。
3. この数字が現場の実感とずれる理由
ここまで読んで、納得できない方も多いと思う。現場では人が足りず、辞めた話も聞く。それなのに統計は「離職率は低い」「令和6年は人が増えた」と言う。
ずれる理由は、統計の作り方にある。ここを知らずに数字だけ引用すると、判断を誤る。
この調査の対象は、5人以上の常用労働者を雇用する事業所から無作為に抽出した約15,000事業所だ。つまり次の人たちは数字に含まれていない。
- 一人親方(雇われていない個人事業主)
- 4人以下の事業所で働く人
- 事業主本人や、その家族で働いている人
建設業は小規模な事業者が多い業界だ。統計に映っていない層が、他産業より厚い可能性がある。
規模感でいうと、この調査が対象としている建設業の常用労働者は約251万人(令和6年1月1日現在)。一方、国土交通省が示す建設業就業者は478万人(令和7年平均)だ。調査の目的も定義も違う数字なので単純に引き算はできないが、離職率が映しているのは業界のうち一定の範囲だと分かる。
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」調査の概要・付属統計表2-1/国土交通省「建設業を取り巻く環境について」
もう一点、誤解されやすいのが入職超過の意味だ。入職率は「調査対象の事業所に入った人の割合」で、他の会社から移ってきた人も含まれる。入職超過がプラスでも、それは業界全体の人口が増えたという意味ではない。実際、建設業の就業者数は減り続けている。
- 平成9年(1997):685万人
- 平成22年(2010):504万人
- 令和7年(2025):478万人
国土交通省「建設業を取り巻く環境について」より。総務省「労働力調査」を基に国土交通省が作成した数値。
ピーク時から約3割減っている。事業所への出入りは均衡していても、業界としては縮んでいる。この2つは別の話だ。
4. 離職率が低いのに、人が足りない理由
離職率が低く、令和6年は入職超過だった。それでも現場が足りないのはなぜか。理由は「出ていく速さ」ではなく「入ってくる母数」と「年齢構成」にある。
理由1|引退による自然減が続く
建設業の就業者のうち、55歳以上が36.6%、29歳以下は11.9%だ(令和7年平均)。3人に1人以上が55歳以上で、20代以下は10人に1人しかいない。
この構成では、辞める人が増えなくても、定年や引退で毎年一定数が抜けていく。そして抜けた分を埋める若い層が、そもそも少ない。離職率という「率」には、この引退の波は十分に映らない。
理由2|入ってくる人の絶対数が足りない
令和6年の入職率11.7%は10年で最も高い水準だが、母数である就業者そのものが478万人まで減っている。率が上がっても、実数はピーク時ほど戻らない。
加えて、建設関連の職種は求人に対して応募が集まりにくい。有効求人倍率で見ると全職業を大きく上回る水準が続いている。この構造は建設業の人手不足はなぜ深刻なのかで詳しく整理した。
理由3|採用の打ち手が限られている
もうひとつ、建設業に固有の事情がある。工事に直接従事する「建設業務」については、有料の職業紹介事業者が職業紹介をしてはならないと法律で定められている。労働者派遣も原則として禁止だ。
つまり、とび・鉄筋工・型枠・塗装・解体といった現場の作業職は、お金を払って人を連れてきてもらう方法が使えない。自社で募集して集めるしかない。人が足りないのに、打ち手そのものが他業界より少ないということだ。
根拠:職業安定法第32条の11/労働者派遣法第4条第1項第2号
なお、施工管理・現場監督・CADオペレーター・現場事務など、作業に直接従事しない職種は人材紹介・派遣を使える。またハローワークの職業紹介は職種を問わず使える。禁止されているのは有料の職業紹介事業者による紹介であって、紹介という行為そのものではない。
5. 若手だけは数字が逆を向いている
ここまで「建設業は辞める業界ではない」という話をしてきた。ただし若手に限っては逆だ。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者)によると、新規高卒就職者の就職後3年以内の離職率は、建設業が41.4%。調査産業計の37.9%を上回っている。
| 区分 | 建設業 | 調査産業計 |
|---|---|---|
| 全体の離職率 令和6年・雇用動向調査 | 10.0% | 14.2% |
| 新規高卒の3年以内離職率 令和4年3月卒 | 41.4% | 37.9% |
2つの数字は調査も対象も異なる。全体の離職率は1年間に辞めた人の割合、3年以内離職率は新卒者が3年かけて辞めた累計の割合であり、単純に比べられるものではない。ここで見てほしいのは「建設業と全産業の上下が入れ替わっている」という点だ。
全体では建設業のほうが低いのに、新規高卒では建設業のほうが高い。会社全体としては人が定着していても、入ったばかりの若手だけが抜けていく——この二層構造が、建設業の採用のいちばん厄介なところだ。
そして若手が抜けると、年齢構成はさらに偏る。29歳以下が11.9%という数字は、採用できていない結果であると同時に、採用した若手が残らなかった結果でもある。
若手が辞める理由と、採用の段階で打てる手は建設業の若手はなぜ辞めるのか|採用段階でできる定着設計にまとめている。
6. では何をすべきか|順番を間違えない
数字から導かれる打ち手は、世間で語られがちなものとは順番が違う。
離職率が全産業より低いということは、すでに入っている人は残っているということだ。この状態で定着施策に力を入れても、伸びしろは大きくない。
足りないのは入ってくる人の数のほうだ。だから順番としては、まず募集の設計を直し、母集団を作る。そのうえで、抜けやすい若手に絞って定着の手を打つ。
- 求人の中身を直す:同じ媒体でも、書き方で応募数は変わる。給与の幅、仕事の具体、休日の実態を書く。求人が来ない原因と対策にまとめた。
- 応募後の対応を速くする:応募から連絡までの時間が長いほど、他社に流れる。母集団を増やす前に、取りこぼしを止める。
- 出し先を広げる:無料で出せる媒体から試し、反応を見て有料に広げる。
- 若手だけは定着を設計する:入社1年目の離職が最も多い。教育担当を決める、初月の面談を入れるなど、仕組みで受ける。
- 採用単価を把握する:1人採るのにいくらかかっているかを出す。建設業の採用コストと採用単価の相場で計算方法を書いた。
「うちは離職率が高いから人が足りない」と考えていた会社は、この順番を入れ替えるだけで動きが変わることがある。まず自社の離職率を計算して、10.0%と比べてみるといい。大きく上回っていれば定着に手を打つ意味があるし、下回っているなら課題は入口にある。
自社の離職率の出し方
雇用動向調査と同じ定義で計算するなら、次の式になる。
離職率(%)= 1年間の離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100
年初の人数を分母にして、その1年で辞めた人の数を割る。パート・アルバイトを含めるかどうかで数字が変わるので、比べるときは条件を揃える。
7. ゴリラ採用の考え方
ゴリラ採用は、建設業に完全特化した採用代行(RPO)だ。現場の作業職は有料の人材紹介が使えない——その制約を前提に、求人原稿づくりから媒体の運用、応募が来たあとの対応までをまるごと代行する。
数字を見てきたとおり、建設業の課題は「辞めさせない」より「入ってくる人を増やす」ほうにある。私たちが力を入れているのもそこだ。求人票を書き直し、出し先を選び、応募に速く反応する。この地味な運用を続けられるかどうかで、同じ求人でも結果が変わる。
自社の離職率が業界と比べてどうなのか、課題が入口と定着のどちらにあるのか。実際の数字をお持ちいただければ、無料相談で一緒に整理する。