1. 「500万円の壁」とは?許可が要る工事・要らない工事の境界
建設業を営むには、原則として建設業許可が必要だ(建設業法 第3条)。ただし例外がある。「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、許可がなくても工事ができる。この“許可が要るか要らないか”の境界が、いわゆる「500万円の壁」だ。
ここで一番間違えやすいのが、金額の基準が工事の種類で違うという点だ。
- 建築一式工事以外(大工・とび・土工・電気・管・内装など):1件の請負代金が500万円未満なら許可不要
- 建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅なら許可不要
つまり「建設業許可はぜんぶ500万円から」と考えると誤りで、建築一式工事だけは1,500万円が壁になる。多くの専門工事の職人にとっては、500万円が現実的なラインだ。
税込で判定する。消費税・地方消費税を含めた金額で見るので、「税抜500万円ならセーフ」は誤りだ。
契約を分けても合算される。1つの工事を正当な理由なく分割して契約しても、合計額で判定される。
支給材料は加算する。注文者から材料の提供を受ける場合は、その材料費(市場価格+運送費)を請負代金に足して判定する。
根拠:建設業法 第3条第1項ただし書/建設業法施行令 第1条の2
2. なぜ今、一人親方が許可を目指すのか
背景には、個人事業の建設業者が長期的に減り続けているという事実がある。国土交通省「建設業許可業者数調査」によると、建設業の許可業者数はピークの平成12年3月末に60万980業者あったが、令和7年3月末には48万3,700業者まで減っている。
注目すべきは、この減少のほとんどが個人事業主だという点だ。個人の許可業者はピーク比で約9万1,000業者(▲57.5%)も減り、直近では令和6年3月末の6万7,780業者から令和7年3月末の6万7,277業者へとさらに減っている。一方で法人の数は大きく崩れていない。
裏を返せば、地域で頼られてきた個人の業者が抜けていく中で、許可を取って元請に回れる一人親方には、仕事を取りに行く余地が広がっているということでもある。500万円の壁を越えることは、その第一歩になる。
3. 建設業許可の5つの要件 ― 一番のハードルはどこか
建設業許可(一般建設業)を取るには、大きく5つの要件を満たす必要がある。
- 経営業務の管理責任者(経管):建設業の経営を担える人がいること。法人は常勤役員、個人は本人または支配人が、建設業の経営経験などを一定年数もつことが基本(建設業法 第7条第1号)。
- 専任技術者(専技):営業所ごとに、専門知識をもつ技術者を専任で置くこと。指定学科の卒業+実務経験、実務10年以上、または国家資格などで証明する(第7条第2号)。
- 財産的基礎:自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があること(第7条第4号)。
- 誠実性:請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと(第7条第3号)。
- 欠格要件に当たらない:破産して復権していない、許可取消から5年以内などに該当しないこと(第8条)。
このうち、つまずきやすいのは「経管」と「専技」という人の要件だ。経営経験や実務経験を“書類で証明できるか”が勝負になる。次に、500万円の財産的基礎をどう示すかが続く。要件そのものより、それを裏づける資料集めに時間がかかることが多い。
4. 個人事業主のまま取れる?法人化は必要か
結論から言うと、個人事業主のままでも建設業許可は取れる。法人化は必須ではない。要件のなかでも「経管は個人なら本人または支配人」と定められており、制度として個人での取得が想定されている。
ただし、許可を取ったあとに法人化(法人成り)する場合は注意が要る。個人で取った許可は、法人へ自動では引き継がれない。原則は法人として新たに取り直す扱いだ。
令和2年10月施行の改正で、事前に認可を受ければ個人から法人へ許可を引き継げる「事業承継の認可制度」が新設された。ただし手続きを踏まないと、許可が切れた空白期間が生じてしまう。法人化を見据えるなら、タイミングと手続きを先に確認しておきたい。
5. 一般と特定、知事と大臣 ― 自分はどれを取る?
建設業許可には区分がある。最初に押さえるべきは次の2つだ。
- 一般建設業/特定建設業:元請として1件の工事を請け、下請に出す総額が大きいかどうかで分かれる。下請総額が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)なら特定建設業の許可が必要になる(令和7年2月1日施行の基準)。それ未満なら一般で足りる。
- 知事許可/大臣許可:営業所が1つの都道府県内だけなら知事許可、2つ以上の都道府県にまたがるなら大臣許可。請負金額の大小とは関係しない。
一人親方が元請になりはじめる段階では、ほとんどの場合一般建設業の知事許可で足りる。特定は、大規模な工事を元請として大量に下請発注するようになってから考えればよい。
| 区分 | 分かれ目 | 一人親方の最初の段階は? |
|---|---|---|
| 一般/特定 | 下請に出す総額 5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上で特定 | ほぼ一般でOK |
| 知事/大臣 | 営業所が1都道府県内なら知事、複数県なら大臣 | 多くは知事許可 |
なお、建設業の業種は土木一式・建築一式の2つに加えて27の専門工事を合わせた全29業種に分かれ、許可の有効期間は5年。更新を忘れると失効するので、取得後の管理も大切だ。
6. 申請の手順・費用・期間の目安
申請の大きな流れはシンプルだ。
- 自分が5つの要件(経管・専技・財産的基礎・誠実性・欠格でない)を満たすか確認する
- 経営経験・実務経験・財産を証明する書類を集める(ここが一番の山場)
- 営業所を置く都道府県(知事許可)または地方整備局(大臣許可)に申請する
- 審査を経て許可。以降は5年ごとに更新する
費用は、知事許可の新規申請で9万円(大臣許可の新規は登録免許税15万円)。審査にかかる標準処理期間は都道府県ごとに異なり、全国一律の決まりはない。たとえば東京都は申請受付後おおむね25日(閉庁日を除く)が目安とされている。自分が申請する都道府県の手引きで、最新の手数料と期間を確認しておきたい。
7. 許可を取った先にあるもの ― 元請になると人手が要る
建設業許可は、ゴールではなくスタートラインだ。許可を取れば500万円以上の工事を元請として受けられる。仕事は大きくなり、単価も上がる。しかしそこで必ずぶつかるのが、「自分一人ではもう回せない」という壁だ。
大きな工事を元請としてさばくには、現場を任せられる職人を自社で抱える必要が出てくる。つまり、許可の次に来るのは「採用」という課題だ。ところが、現場で動きながら求人を出し、応募に即対応し、面接の時間をつくる——これを社長が一人で抱えると、本業の現場まで手が回らなくなる。
ここで頼れるのが、採用をまるごと任せる「採用代行」という選択肢だ。ゴリラ採用は、建設業に完全特化した採用代行(RPO)として、求人づくりから媒体運用、応募対応、面接調整までを代行している。社長が現場と経営に集中したまま、組織を広げていける。許可を取って事業を伸ばすそのタイミングで、最初の採用をどう設計するかは、無料相談で具体的に相談できる。