1. 電気工事士の採用は「今どのくらい」難しいのか
「電気工事士の求人を出しても、応募が来ない」。そう感じている会社は多い。数字を見ても、それは気のせいではない。
厚生労働省の職業別有効求人倍率(令和8年5月分・全国計・常用パート含む)を見ると、全職業計が0.99倍であるのに対し、電気工事従事者は3.22倍。新規求人倍率に至っては5.77倍に達する。
- 全職業計の有効求人倍率:0.99倍
- 電気工事従事者の有効求人倍率:3.22倍(新規求人倍率5.77倍)
求職者1人に対して求人が3件以上並ぶ計算だ。同じ月の建設系を並べると、建設躯体工事従事者7.55倍・土木作業従事者5.70倍という職種もあり、電気工事はその中では突出して高いわけではない。それでも全職業計の3倍を超える水準で、「出せば採れる」市場ではないことははっきりしている。
さらに効いてくるのが、担い手の高齢化だ。総務省の令和2年国勢調査によると、電気工事従事者の就業者数は約50.6万人で、その年齢構成は次のようになっている。
- 平均年齢:47.74歳
- 50歳以上:42.9%
- 29歳以下:13.7%
半数近くが50歳以上で、今いる担い手が今後10〜15年で順に引退していく。一方の入口である第二種電気工事士試験の受験者数は、ここ数年は年14万人前後で推移し、大きくは増えていない。退職のペースに、新規の担い手が追いついていないのが実情だ。建設業全体の人手不足と同じ構造が、電気工事という職種の中でも起きている。
2. なぜ電気工事士は採用が難しいのか
理由は一つではないが、大きく3つの「重なり」で説明できる。
(1) 資格がないと従事できない参入障壁
電気工事は、電気工事士法によって有資格者(第一種・第二種電気工事士など)でなければ作業できないと定められた職種だ。未経験者を採ってもすぐに一人前の戦力にはならず、資格取得と実務経験の積み上げが前提になる。「人が足りないから今すぐ増やす」が構造的に効きにくい。有資格者数は第一種が約67万人、第二種が約210万人(いずれも2018年時点の免状交付累計)だが、資料でも1種・2種とも50歳以上が半数を占め、高齢化が指摘されている。
(2) 高齢化と世代交代の遅れ
前章のとおり、従事者の42.9%が50歳以上だ。ベテランが引退していく一方で、若手の入職と資格取得がそれを埋めきれていない。頭数の問題であると同時に、「現場を任せられる有資格者」という質の面でも、供給が細っていく。
(3) 需要はむしろ増え続ける
担い手が減る一方で、電気工事の仕事は増える見通しだ。国の政策だけを見ても、再生可能エネルギーの拡大(2040年度の電源構成で再エネ4〜5割程度の見通し)、EV充電インフラの整備(2030年までに充電器30万口)、2025年4月からの新築の省エネ基準適合義務化など、電気工事の需要を押し上げる要因が並ぶ。仕事が増えるのに担い手が減る——この需給ギャップの拡大が、採用難の一番の根っこにある。
3. 現場の電気工事は「人材紹介・派遣」に頼りにくい
ここが、電気工事士の採用で見落とされやすい重要な前提だ。結論から言うと、新築・改修工事の現場で行う電気工事は、有料の人材紹介や労働者派遣を使って人を集めることができない。
法律上、有料の職業紹介事業者は「建設業務」に就く職業を紹介してはならないと定められている(職業安定法第32条の11)。この「建設業務」とは、土木・建築その他工作物の建設・改造・保存・修理・変更・破壊・解体の作業、またはその準備の作業に係る業務を指す。労働者派遣も同じ定義で建設業務が禁止されている(労働者派遣法第4条第1項第2号)。新築・改修工事の現場で行う電気配線・電気設備の設置は、この「工作物の建設・改造の作業」に含まれると考えられる。
禁止されるのは、あくまで現場で直接その作業に従事する建設業務だ。厚生労働省の運用基準でも、建設業務は「工事現場において直接にこれらの作業に従事するもの」に限られるとされている。したがって、工事の工程・品質・安全を管理する施工管理や設計、事務は建設業務に当たらず、人材紹介・派遣を利用できる。また、新築・改修工事を伴わない完成後の設備の保守点検・故障対応だけを行う業務も、建設業務に当たらず対象外になり得る。自社が採りたいポジションがどちらなのかを、まず切り分けて考えたい。
根拠:職業安定法第32条の11/労働者派遣法第4条第1項第2号/厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」
つまり、現場で配線や設備工事を担う電気工事士を増やしたい場合、「紹介会社に頼んで連れてきてもらう」という手段が基本的に使えない。施工管理のように紹介も選べる職種とは、採用の前提が違う。だからこそ、求人媒体をどう運用し、応募をどう取りこぼさず直接採用につなげるか、という設計が採用の成否を分ける。
4. 未経験から電気工事士を増やせるか
資格職ではあるが、入口が完全に閉じているわけではない。「電気工事士 未経験 採用」で調べる採用担当者が一定数いるとおり、未経験からの育成は現実的な打ち手になる。
鍵は第二種電気工事士だ。第二種は受験資格に制限がなく、誰でも受験できる。学科試験の合格率もおおむね5〜6割(令和7年度の第二種学科は56.6%)で、国家資格の中では入口が比較的入りやすい部類に入る。一般用電気工作物(一般住宅や小規模店舗などの電気設備)の工事は、第二種で対応できる。
そのため、実務としては次のような育成前提の採用が現実的だ。
- 未経験者を採用し、補助・見習いとして現場経験を積ませながら第二種の取得を目指してもらう
- 受験費用の補助や勉強時間の確保など、資格取得支援をセットで用意する
- 第一種が必要な規模の工事(大規模施設・高圧設備など)は、有資格の経験者を別枠で採用する
「即戦力の有資格者だけ」を狙うと母集団は一気に狭くなる。育成枠と即戦力枠を分け、育成枠を求人でどう魅力づけるかが、母集団を広げる現実的な一手になる。
5. 外国人材は選択肢になるか
「電気工事士 外国人 採用」も一定の関心があるテーマだ。ここは制度の切り分けを間違えると採用計画が崩れるため、正確に整理したい。
現場の電気工事に従事する外国人材のルートとしては、特定技能「建設分野」が中心になる。建設分野の特定技能は3つの業務区分に整理されており、電気工事はそのうち「ライフライン・設備」区分に含まれる。この区分は「電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業等」と定義されており、電気設備の設置・修理などが対象だ。しかも、在留期間の更新に上限がない特定技能2号の対象区分にもなっている。
混同されやすいが、技能実習制度には現場の電気工事に対応する職種が存在しない。建設関係の移行対象は22職種33作業あるが、その中に電気工事は含まれていない。技能実習で「電気」と付く職種(電気機器組立てなど)は機械・金属関係=製造業の職種であり、建設現場の配線・電気設備工事とは別のカテゴリだ。外国人材で現場の電気工事を担ってもらう前提なら、技能実習ではなく特定技能を軸に考えることになる。
根拠:出入国在留管理庁「建設分野における特定技能の運用に関する方針」/法務省「技能実習 移行対象職種・作業一覧」
外国人材は選択肢になり得るが、在留資格ごとに担える業務と手続きが明確に分かれている。自社が任せたい業務(現場工事か、それ以外か)に応じて、正しいルートを選ぶ必要がある。
6. 求人媒体・採用代行、どう採り切るか
ここまでを踏まえると、電気工事士(現場の工事職)の採用手段は、実質的に絞られてくる。人材紹介・派遣が使いにくい以上、残るのは求人媒体の運用と、そこからの直接採用だ。
| 手法 | 現場の電気工事での使いやすさ | ポイント |
|---|---|---|
| 人材紹介・派遣 | 使いにくい | 新築・改修の現場工事は建設業務に当たり、有料紹介・派遣が法律上できない(施工管理・保守などは対象外) |
| 求人媒体(自社運用) | 使える | 掲載費でコストは抑えやすいが、原稿づくり・運用・応募対応まで自社の工数がかかる |
| 採用代行(RPO) | 使える | 原稿から母集団形成・応募対応まで一貫して任せられる。運用を任せる分、月額の費用がかかる |
紹介という「連れてきてもらう」手段が使いにくい分、電気工事士の採用は、求人の見せ方と運用の質がそのまま結果に直結する。資格取得支援や需要の伸び、キャリアの見通しといった「電気工事士として働く魅力」を、いかに求人原稿と対応スピードで伝えきるかが勝負になる。応募が来ない原因の多くは媒体ではなく原稿と運用にある——この点は応募が集まる求人原稿と運用の勘所でも解説している。
ゴリラ採用の考え方
ゴリラ採用は、建設業に完全特化した採用代行(RPO)だ。電気工事士という職種特有の難しさ——資格という参入障壁、担い手の高齢化、需要の増加、そして現場工事は人材紹介・派遣に頼りにくいという前提——を踏まえたうえで、求人原稿づくりから媒体運用、応募対応・面接調整までをまるごと代行する。
紹介に頼れない職種だからこそ、建設現場を当事者として動かしてきた知見で、募集の見せ方と運用の精度に差をつけられると考えている。採用代行を選ぶ際の費用感や選び方は、建設業の採用代行とは?費用・選び方・完全ガイドでまとめている。